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「田」がつく市町村は、本当に田んぼが多いのか?

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この記事で分かること

  • 名前に「田」がつくと、本当に田んぼは多いのか
  • 市と町村で、結果はどう違うのか
  • 田んぼが多い土地ほど「田」がつくのか

1.田原市に、田んぼはあるのか

全国1,718市町村の名前を一文字ずつ数えると、最も多い漢字は「川」で107回、次いで「田」が88回でした。上位には地形を表す字が並びます。

市町村名に最も多く使われる漢字は?市町村名に使われる漢字を一文字ずつ数えた記事です。上位5位のうち4つが川・田・山・野という地形の字でした。datasanpo.com

地名は、そこにあるものから付けられます。田原市、田川市、太田市、飯田市。「田」がつく市町村は全国に88あります。

では、そこには本当に田んぼが多いのでしょうか。

名前がそのまま土地の姿を表しているなら、「田」がつく市町村は、つかない市町村より田んぼの割合が高いはずです。

どちらだと思うか、選んでみてください。

市町村ごとの田んぼの面積を取ってきて、1件ずつ確かめてみます。

2.市町村ごとの田んぼを数える

市町村の総面積は国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」を、田の面積は農林水産省「作物統計調査 市町村別データ」を使用しました。

作物統計調査 市町村別データ 令和6年産 - e-Stat市町村ごとの耕地面積を、田と畑に分けて収録したデータ。農林水産省が公表しているものです。e-stat.go.jp

区を除いた1,718市町村のうち、面積と耕地面積の両方が取れた1,717件が対象です。それぞれについて、総面積に占める田の割合を算出しました。

比べ方は中央値にします。田の面積率は0%から66%まで大きく散らばっていて、平均だと極端な市町村に引っぱられるためです。

3.たしかに、多かった

1,717市町村を、名前に「田」を含む88件と、含まない1,629件とで田の面積率の中央値を比較しました。

田の面積率の中央値(全1,717市町村)
「田」がつく8.19%
つかない4.96%

※ 記事内で説明した集計をもとに作成した図です。

結果、「田」のつかない市町村の田の面積率の中央値は4.96%に対して、「田」がつく市町村は8.19%と、3.2ポイントの差がありました。

ただ、中央値はまん中の1件がどこにあるかを示すだけです。88件と1,629件がそれぞれどう散らばっているのかまでは分かりません。

そこで、田の面積率でいくつかの階級に区切り、それぞれの群の何%がどの階級に入るのかを数えました。左の図が「田」がつく88件、右がつかない1,629件です。件数が大きく違うので、どちらも自分の群のなかでの割合に直してあります。

田の面積率の分布

「田」がつく

88市町村

0142814.81%未満28.41〜5%18.25〜10%28.410〜20%10.220%以上市町村の割合(%)田の面積率

つかない

1,629市町村

0142822.81%未満27.31〜5%20.35〜10%16.510〜20%13.120%以上市町村の割合(%)田の面積率

※ 縦軸は、その群の市町村のうち何%がその階級に入るかです。2つの図で目盛りを揃えています。

見るべきは、山の位置です。つかない群は左端がいちばん高く、田がほとんどない市町村が22.8%を占めます。一方「田」がつく群では、そこは14.8%しかありません。

そのぶん、右寄りが厚くなります。10〜20%の階級は「田」がつく群で28.4%、つかない群で16.5%。1.7倍の開きです。

つまり「田」がつく市町村は、田がない側が少なく、田が多い側に寄っている。中央値の差は、この山のずれから出ていたことになります。

名前は、土地の姿をある程度は映しているようです。

4.ところが、市だけに絞ると消える

同じ計算を、市・町・村に分けてやり直しました。

種別ごとの田の面積率(中央値)

市

791市/「田」つき49

「田」がつく6.79%
つかない6.73%

町

743町/「田」つき33

「田」がつく9.29%
つかない4.44%

村

183村/「田」つき6

「田」がつく7.78%
つかない0.74%

※ 記事内で説明した集計をもとに作成した図です。並べたグラフで目盛りを揃えています。

市では、差がありません。6.79%と6.73%、その差は0.06ポイントです。

種別ごとの田の面積率(中央値)
対象市町村数「田」つき「田」がつくつかない差
全市町村1,717888.19%4.96%+3.23ポイント
市だけ791496.79%6.73%+0.06ポイント
町だけ743339.29%4.44%+4.85ポイント
村だけ18367.78%0.74%+7.04ポイント
町村だけ926398.72%3.35%+5.37ポイント

町は+4.85ポイント、村は+7.04ポイント。差があるのは町村のほうで、市にはありません。全市町村でまとめたときに見えた3.2ポイントの差は、町村が生んでいたものでした。

なぜ市だけ差が出ないのか。市が大きすぎるから、と考えられます。

平成の大合併で、市は周りの町村を吸収して広くなりました。ひとつの市のなかに市街地も田んぼも山もあります。名前が「田」でも、その市全体を言い表しているわけではありません。

町村は小さいぶん、名前が指す範囲と実際の土地が近くなります。とくに村では差がはっきり出ました。「田」がつかない177村は中央値0.74%とほとんど田がないのに対し、「田」がつく6村は7.78%です。蓬田村(青森県12.7%)、田舎館村(同51.0%)、平田村(福島県8.4%)、宮田村(長野県7.1%)。名前のとおりでした。

5.田んぼが多すぎる土地には、「田」がつかない

ここまでの結果からすると、田の面積率が高い市町村ほど「田」がつくはずです。ところが、そうはなっていません。

田の面積率ごとに見た、名前に「田」がつく市町村の割合

名前に「田」がつく割合

全1,717市町村

0493.41%未満5.31〜5%4.65〜10%8.510〜20%4.120%以上「田」がつく割合(%)田の面積率

※ 3章の図とは縦軸が違います。こちらは、その階級に入る市町村のうち名前に「田」を含むものが何%かです。

10〜20%でいちばん多くなり、20%以上ではむしろ下がります。

右肩上がりではなく、山の形です。田んぼが多いほど「田」がつく、という単純な話ではありませんでした。

上位を並べると、理由が見えてきます。

田の面積率が高い市町村(上位15)
順位市町村都道府県田の面積率
1妹背牛町北海道66.8%
2大潟村秋田県65.8%
3南幌町北海道63.2%
4三川町山形県62.6%
5新篠津村北海道61.9%
6河内町茨城県61.9%
7美里町宮城県61.5%
8湯川村福島県60.8%
9秩父別町北海道59.3%
10白石町佐賀県56.4%
11入善町富山県52.9%
12長沼町北海道52.9%
13大木町福岡県52.3%
14田舎館村青森県51.0%
15川北町石川県50.6%

上位30まで広げても、名前に「田」を含むのは14位の田舎館村ひとつだけでした。全国の市町村では19件に1件が「田」を含むので、それより少ないことになります。

並んでいるのは、八郎潟を干拓した大潟村、石狩平野の妹背牛町・南幌町・新篠津村、有明海に面した白石町、黒部川扇状地の入善町。いずれも一面が田んぼの土地です。

田んぼしかない場所で「田」と名づけても、目印になりません。

地名はその場所を他と区別するために付きます。周りに田しかなければ、田は区別の役に立たない。だから使われないのだと考えられます。

6.🔍 ちなみに、どうやって調べた?

分析方法をくわしく見る

使用したデータ

市町村名は総務省「全国地方公共団体コード」(令和6年1月1日現在)。田の面積は農林水産省「作物統計調査 市町村別データ 令和6年産」の耕地面積。市町村の総面積は国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」(令和8年4月1日)です。

区194件と北方領土の6村を除いた1,718市町村のうち、面積と耕地面積の両方が引けた1,717件を対象にしました。引けなかった1件は東京23区をまとめた行です。

数え方

  1. 1田の面積率は、その市町村の総面積に占める田耕地面積の割合。1平方キロメートル=100ヘクタールで換算した
  2. 2名前は末尾の「市」「町」「村」を除いた部分。そこに「田」を含むかどうかで2群に分けた
  3. 3比べたのは中央値。田の面積率は0%から66%まで散らばり、平均だと極端な市町村に引っぱられるため

分析上の注意点

  • 田の面積は2024年、地名は数百年前に付いたもの。干拓で増えた田も、宅地になって消えた田もある
  • 「関係がある」といえるのは、名前と田の面積率が一緒に動いているということ。名前が田の量を決めているわけでも、その逆でもない
  • 村は183件と少なく、「田」がつくのは6件だけ。村の結果は少数から出たものとして見る必要がある
  • 市町村は合併で変わるため、この数字は令和6年時点のもの

7.まとめ

「田」がつく市町村は、たしかに田んぼが多いところでした。ただし、そう言えるのは町と村だけです。

1,717市町村ぜんたいで見ると、「田」がつく88件は田の面積率が中央値8.19%。つかない1,629件は4.96%です。分布を並べても、「田」がつく側は田のない市町村が少なく、田の多い側に寄っていました。

ところが市だけに絞ると、6.79%と6.73%。差は消えてしまいます。市は合併で広くなり、ひとつの市のなかに市街地も田んぼも山も抱えるようになりました。名前が指すものと、実際の土地がずれてしまったのでしょう。差が残っていたのは町と村、つまり小さい単位のほうでした。

もうひとつ、田んぼが多すぎる土地では「田」はかえって使われません。田の面積率が高い上位30のうち、名前に「田」を含むのは田舎館村ひとつだけでした。周りが一面の田んぼなら、「田」と名づけても他と区別がつかないからでしょう。

地名は、その土地の姿をそのまま写した絵ではありません。他の場所と見分けるための印です。今回の結果は、そう考えると筋が通ります。

分かったことをまとめると、次のとおりです。

  • 「田」がつく88市町村は田の面積率が中央値8.19%。つかない1,629市町村は4.96%
  • ただし市だけで見ると6.79%と6.73%で差がない。差があるのは町と村
  • 田んぼが多い上位30市町村のうち、「田」がつくのは田舎館村の1件だけ

よくある質問

「田」がつく市町村は田んぼの割合が高いですか?
全1,717市町村で見ると高いです。名前に「田」を含む88市町村は田の面積率が中央値8.19%、含まない1,629市町村は4.96%で、3.2ポイントの差があります。分布で見ても、田がほとんどない市町村の割合が「田」つきでは14.8%、つかない側では22.8%と差が出ました。
市だけに絞ると結果は変わりますか?
変わります。791市で見ると「田」つき49市が6.79%、つかない742市が6.73%で、差は0.06ポイント。ほとんど差がありません。差があるのは町村のほうで、町が+4.85ポイント、村が+7.04ポイントでした。
田んぼが最も多い市町村には「田」がつきますか?
つきません。田の面積率の上位30市町村のうち、名前に「田」を含むのは田舎館村(青森県)の1件だけです。上位に並ぶのは干拓地や大規模水田地帯で、一面が田んぼの土地では「田」が目印にならないためと考えられます。

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